日の出町すぎ病院 院長(日本糖尿病学会専門医)
名取 省一
平成29年9月15日時点での我が国の65歳以上の人口は3514万人で高齢化率は27.7%と世界の中でもいち早く高齢社会に突入しています。平成28年の国民健康・栄養調査において、「糖尿病が強く疑われる人」は約1000万人とされ、男女とも60歳以上の割合が増えています。このような背景を踏まえて、平成29年(2017年)に日本糖尿病学会と日本老年医学会は合同で「高齢者糖尿病診療ガイドライン」*を発表しました。
現在65歳以上を高齢者と定義していますが、健康状態には個人差が大きいため、総合機能評価(身体機能、認知機能、心理状態、栄養状態、服用薬剤の有無、社会・経済状況)を行い、手段的・基本的ADL(日常生活動作),認知機能、重症低血糖のリスクなどを考慮して血糖コントロールの治療目標を立てることが、この診療ガイドラインの骨子となっています。今までは個々の年齢や健康状態を考慮していない一律の血糖コントロール基準であったものが、新たなガイドラインでは高齢糖尿病患者に対して上記の総合機能評価を行い層別化して、それぞれのカテゴリーで血糖コントロールを行うというものになりました。つまり、ADLの低下や認知症や多くの併存疾患・機能障害のある方の血糖コントロールは、重症低血糖を避けるためにもマイルドに行うべきであると勧告している訳です。
*詳細は「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」でインターネット検索してみてください。
2018年6月25日